2015.02.25 Wednesday

裸の王様

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    俺はこの会社の社長だ。

    俺がこの会社の憲法だ。

    俺が全てを裁く。俺の気に入らないことはすべてアウト。

    俺の好きなようにやる。当たり前だ。

    気に入らないヤツは首にする。

    文句あっか?俺はこの会社の社長だ。偉いんだ。

    俺に意見するって?

    いい根性じゃないか。覚悟はできてるんだな?

    えっ?

    俺が般若心経を毎朝唱えているって知ってる?

    なんのこっちゃ?関係ないだろ?

    えっ?

    大乗仏教は「救済」を目的にしてるって?

    そっ、そんなの当たり前だ。知ってるに決まってるだろおぅ〜・・

    えっ?

    全ての人に仏性があるって?

    そっ、そうなんだ。そうだろう・・・

    悪人だって救われる可能性はあるんだって?

    そっ、そりゃ〜 そ、そうだな・・・・

    ・・・・・・



    「般若心経」はただの呪文じゃないです。意味があります。



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    2015.02.13 Friday

    Untitlde ♯03

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      幕間にお手洗いに行った。

      靴紐が緩んだので出口にしゃがみこんで紐を結び直していたら、
      そこに「初めて『好きです』と告白した子」が
      歩いて来た。

      全身黒い服を着ていたが喪服ではなかった。

      「こんにちは。お懐かしい」
      と彼女は言った。

      こんなところで逢うとは思わなかったので、驚いたが、
      本当に懐かしかったので、ついまじまじと彼女の顔を見てしまった。

      シワがある。自分と同じような年齢だ。

      よく考えると彼女の顔を良く覚えていないのだが、それでも彼女だと解る。

      彼女の視線は私ではなく背後に注がれていた。振り返ると旦那が用を足して出てきたところだった。
      ぼさぼさの髪の毛。赤い顔。太い眉。

      いそいそと席に戻ると、靴の紐がまだ緩んでいる。
      靴下が靴の中に引っ張り込まれていたので、靴を履き直そうと靴を脱いだら
      昔、彼女にもらった靴下を履いていた。

      靴下には穴が開いていた。




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      2014.03.11 Tuesday

      Untitled ♯02

      0

        妻と娘が思わず手を口で覆った。


        「おめでとうございます。ご主人は日本国のために命を投げ出す御覚悟。まことに尊いことです。」
        市役所の職員は、赤い封筒を妻に手渡した。


        職員が玄関戸を閉めると、二人は声を上げて泣いた。


        赤い封筒の中身は解っている。
        与党が多数決で国会で成立させた「原子力発電所事故現場に強制的に召集できる法」の、私への「召集令状」だ。


        被爆者続出で危機的な原子力発電所に人を送り込むために政府・与党が成立させたのだ。


        悪化するばかりの原発事故現場。高い濃度の放射能が次々と作業員を被爆させ、もう一般募集では人が集まらなくなったのだ。


        50歳代を狙い撃ちのしたのは、人口比率の高い高齢者や団塊の世代は、与党の票田なので手をつけないようにし、また若い人も国の将来性を考え避けたと思われる。


        働き盛りのピークを過ぎた我々が、強制的に前線へと追いやられるのだ。


        すでにもう何陣も送り込まれている。その多くが病院に収容されているという噂だが、無事退院したという話はひとつも聞かない。


        赤紙を無視して逃げる手もある。ただし捕まるともっとも放射能レベルが高い現場に送られる。
        数分で致死量を超える被爆であろう。


        もっとも、屍の山を乗り越えてあのメルトダウンを誰かが止めないと、この国はだれも住めないところになる。
        それどころか、北半球がダメになるのも時間の問題だろう。


        行くしかないのである。

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        2013.10.20 Sunday

        Untitled ♯01

        0

           男が夜な夜なミシンを踏んでいる。
           

          日中は発掘現場で働き、午後5時の定時ですぐ帰宅用意し、ラッシュ時間の駅に飛び込む。
          乗り継ぎ駅をいくつか経由し、1時間半かけてアパートのある駅に降り立つ。
          駅前の弁当屋で一番安い「かき揚げ」を二つ買って部屋に帰る。
          その「かき揚げ」を「てんつゆ」でさっと煮込んで玉を流し込み、天丼をつくる。
          まぁまぁ旨いし、安上がりだからな、それ以上を望んじゃいけない。
          そしてミシンに向かう。
          リバース装置付きのカセットデッキに「ブルーハーツ」のカセットを入れ、音楽に酔いながらミシンを踏む。
          天丼とともに焼酎の炭酸割りを飲んだから、いっそう音楽に酔う。ロックに酔う。ブルーハーツに酔う。
           

          あぁ、もう寝なくっちゃ、明日の仕事に障るな。
          炎天下での発掘作業は、しんどいんだぜ。
          と独り言を言って男は熱い風呂に入り寝る。
          贅沢にも内風呂つきのアパートなんだ。
           

          月曜日から金曜日、週末も一目散に帰宅しミシンを踏む。
          赤い布をひたすら繋ぎ、何を作ろうとしているのだ?
          土曜も日曜もミシンを踏む。
          その間、洗濯と掃除もした。意外ときれい好きのようだ。
           

          この街の週末には、魅力的なライブが目白押しだ。
          行きたいライブやお誘いもある。
          しかし、男はミシン仕事を今月末までに仕上げないといけないのだ。
           

          来月には、男の「個展」が開かれることになっている。
          一週間レンタルの画廊で、男の個展が開かれるのだ。
          DMもつくり、友人・知人の郵送した。
          どうぞお越しください、と書かれているらしい。
           

          この街には友人・知人も少ないが、男はこの街で個展を開くことにした。
          だれが見に来てくれるか、皆目見当もつかないが、やるしかないのだ。
          男はなにもかも捨ててミシンを踏んだのだ。
          だが服を作って訳じゃない。
          モード・ファッションが男の土俵ではない。
           

          男の土俵は、「現代美術」。
          コンテンポラリー美術・現在進行形美術だと言う。
           

          そんなもん観る人がいるのか?
          関心ある人がいるのか?
          それをやってなにかいいことでもあるのか?
          それで収入を得ることができるのか?
          収入をえられない仕事なんて、趣味だろ?と言うヤツもいる。
           

          それでも男は開催日に向けてミシンを踏む。
           

          オープンニングに顔を出してやって下さい。
          入場料は画廊では取りません。無料で見られて批評もできるのです。
          そこで、男が何を成し遂げ、何を犠牲にしているか見てやってください。
           

          お願いします。

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