2017.03.30 Thursday

文芸評論

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    『文芸』というジャンルは、『美術』や『音楽』とともに『芸術』を担っている。

    ただ、一般的には『小説』を差すのかと思う。『人文』は大きな意味で『文芸』に含まれると考えることにする。

     

    この『文芸』を評論する人を『文芸評論家』と称するが、

    この名称はあいまいな表現だなと常々感じている。

     

    少し前、吉本 隆明(よしもと たかあき)氏は『文芸評論家』と名乗っていた。いつの間にか故人は『哲学者』となっていた。最近では、柄谷行人氏が『文芸評論家』と言っていたのが、いつの間にか『哲学者』となっていたのを知った。

     

    出世魚ではないのだから、名称が変化していくのはおかしいよなぁ。

    どっちもいい名称ではないか。別をつけて欲しくない。

     

    たしかに『文芸批評』は作家の真髄に切り込み、その人物を解体することで

    時代や思想をあばくことが可能だ。このジャンルでしかできないことだ。

     

    それをさらに追求するすれば、『哲学』的思考になって行くだろう。それは私ですら理解できる。

    なので、彼等を『哲学者』と呼ぶのだろう。まぁ、しかたないか。

    いちゃもんつけてもしょうがないか・・・

     

     

    絵画でなく 音楽でなく 空間でなく 立体でなく

    『言葉』によって人間の可能性の領域の果てまで到達する人。

     

    詩人でも 小説家でも 文芸評論家でも 思想家でも 哲学者でも、なんでもいい。

    人間の本質を『言葉』によって著して、その『言葉』を

    市井の人々の平和と幸福に繋げて欲しい。

     

    それを忘れないで欲しい と願う.

     

     

     

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    2017.02.02 Thursday

    『人類の衝突』 島薗進/橋爪大三郎 を読んで

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      『人類の衝突』の著作名は、サミュエル・ハンティントン『文明の衝突』を影響を受けてのこと。

      この本は、宗教学者の島薗進氏と宗教社会学の橋爪大三郎氏の対談集です。

       

      日本では「宗教学」はわりかし人気があるという。そうかも知れない。

      かくゆう私もその一人で「宗教学」や「文化人類学」が好きである。

       

      それは若い頃に中沢新一がスター学者であったからで、その著作に大いに影響を受けたのが

      大きいだろう。そいうい人は50代には多いんじゃなかろうか?

      (オウム真理経の信者も中沢ファンがいたろうに。)

       

      中沢新一氏のほかに山折哲雄氏にも影響を受けたし、上田紀行氏もそうだね。

      学者ではなかったが詩人の山尾三省氏の仏教世界の紹介も熱心に読んでいたな。

       

      社会学者が宗教を論じるとは橋爪氏から知ったのだが、その先達はマックス・ウエーバーだという。

      そんなことも知らないのです。

       

      欧米では「社会学」として宗教も題材にすることがあるのは解ったが、

      「宗教学」は「神学」を差すとのことで「キリスト教」を掘り下げるのだろう。

      またイスラム社会では、そもそも「宗教学」は存在しなくて、社会がイスラムなのでそれを学問することはない。

       

      日本には「仏教」「儒教」「神道」が平行してあるので、それを学問するのにためらいはなく

      その距離を測るためにも「宗教学」は必須の学問だと思う。

       

      「神道」が生まれたのは「仏教」の影響だというのは、ほとんど事実で、昔から「神道」があったでしょ

      という論は、形が不定形だったのが外から型を持ち込んだ結果、定型という形を与えた、

      ということだと知って欲しい。つまり仏教の伝来によって神道が可視されたのだ。

       

      だが、一般的に「国家神道」は近年つくられたもの。明治政府が建国に必要な要素として生んだもの。

      と捉える。その辺りを2人それぞれの学者として分析している箇所が一番読み応えがあった。

       

      島薗氏の論によると「国家神道」の雛形は古代社会にあって、その後中国の儒教的な帝国理論の影響を受け

      現在もその影響下だという。

       

      橋爪氏はキリスト教みたいな宗教はグローバル・アイデンティティーであるが、神道はローカルなものだった。

      それが植民地化で矛盾を孕んだが敗戦とともに神道もなくなった、という。

       

      そうだとしても、その復活を願う勢力が現在 力を持ってきているのは事実。

       

       

      いずれにせよ、「国家神道」の問題を個人としてきちんと捉えるようにならないと、急激に右翼化している

      政府・与党とその背後にある「日本会議」が語る「神道」と「天皇」の問題に対処できないだろう。

       

      学者でなくても「日本は神の国です」みたいなロジックを、訂正できるだけの知識がないと

      「そのために命を投げ打つことは美しい」なんて喧伝に流されてしまうのではないか、

      と危惧しているのです。

       

      平成天皇が「民主主義の申し子」であること、万葉の世界(「高き屋に のぼりて見れば 煙(けぶり)立つ

      民のかまどは にぎはひにけり」)を体現されていることを鑑みれば、国家神道復活は時代錯誤であると

      言えるであろう。

       

      この本の感想と少し離れてしまった。

       

       

      2人の学者が、「現代の精神文化」をそれぞれの見解で語った本。2人の論をそのまま比較すれば、

      それが現代の問題として浮き出て、問題提起になっている本。そう感じました。

       

       

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      2016.02.05 Friday

      一周忌

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        画家の「田島 征三」氏が、「今江 祥智(いまえ よしとも)さんが亡くなられて、もう一年が過ぎ去ろうとしている」とコメントされているのを見ました。

        「そうなんだぁー」。


        亡くなった児童文学者の今江祥智さんは、作家ですが、同じく児童文学者だった「灰谷健次郎」氏よりは一般には知名度が低いように思いました。知名度が高い作家とは言えなかったです。無念です。

        本来、文学を区切って「児童文学」とか呼ぶのは変なのですが、子供にも解る平坦な言葉を使って表現するので、一般の文学より少し低いイメージを持たれることは残念ですね。今江さんの『ぼんぼん』とか『優しさごっこ』とは、だれにでも届く名作です。

        例えばドイツ人の「ミヒャエル・エンデ」氏の『はてしない物語』や『モモ』は、本国では「児童文学」のくくりではないそうです。日本では『ハイ・ファンタジー』と呼ばれれば、大人も読む本棚にあるでしょうが、今江さんの本は「子供」の本棚にあって、やすやすと大人に届かないのが現状でしょう。

        『飛ぶ教室』という季刊の雑誌があり、そこには長新太・工藤直子・谷川俊太郎・ 江國香織 などなど読み手をそそる書き手・画家が腕を振るっていました。そこの編集も今江さんはやっておりました。学校の先生を中心に熱心な読者を雑誌でした。

        こういう雑誌って今はあるのかな?

        子供のことを真剣に考える文学者は、「子供を戦場に送るような行為」は許さないし、「大人の戦争」を暴いてしまいます。児童文学者だった「山中恒」氏は「ボクラ少国民シリーズ」という評論集を出しています。

        また先日亡くなった「野坂昭如」氏の『火垂るの墓』は有名ですが、氏も死の淵まで「戦争の惨劇」を語っておられました。今江さんほか、近年亡くなられた多くの作家たちは太平洋戦争を子供の頃に体験しています。その経験と「なぜ戦争への道に至ったか」の思慮の形が文学として遺されました。

        2016年が「戦前であった」と後世言われないように、今の政治を見つめないといけません。


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        2015.10.21 Wednesday

        C C C

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          愛知県の小牧市に建設予定だった「ツタヤ図書館」が住民投票で否決されました。
          市長は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との契約を解消を発表しました。

          私はときどき配達でこの市を訪れるので、小牧市のこの動きに興味がありました。
          さすがに住民投票までなったのには、驚きましたが。

          市町村などの行政機関が、保育園や病院などをどんどん民間委託していますね。
          この動きと同調しているのが、図書館を民間委託するこの事案でした。

          ツタヤは本の販売やCD・DVDのレンタルでつつうらうら浸透して伸びてる企業ですから、そこと手を組んで
          街を活性化したい、運営もお任せしましょう、というのが小牧市長の考えでしょう。

          たしかに、ツタヤは実力あります。東京の代官山のオープンした書店は魅力がありますね。
          本好きには、一度は行きたいと思わせる書店です。

          本やレコードなどのコンシェルジュがいるそうじゃないですか。
          この書店ができたとき、きっと何かのアンテナショップだろうな、と想像していました。
          案の定、そうでしたね。図書館を開くためのノウハウをここで培っていたと思われます。

          書店が図書館を持つ。そこにスターバックスなどのおしゃれなカフェも併設する。
          私は基本的にいいんじゃないか、と考えています。

          本屋には「棚つくり」という独特の本の品揃えと配置があって、
          図書館分類方法で出合えない本との出会いを演出してくれる可能性がありますから。

          ただいろんな記事を読むと、利用率は低いけど公立だから収集・記録される郷土資料とか
          古くてぼろぼろだけど希少性の高い本などは、企業によって処分される可能性があることが解ってきました。

          それは困りますよね。歴史・文化は数字化できないところがありますから、それは採算度外視して守って
          いかないといけません。そこを企業もそれを誘致する方も理解して欲しいところです。

          グローバル化している企業は、ローカルティーが弱いものです。こういうことは本来、
          地方の民間企業に任せるのがいいはずです。

          地方の書店連合が図書館を運営するのです。

          多少、おしゃれ感は薄まりますが、行政も地方企業も利用者もお互い切磋琢磨することによって
          文化も経済も活性化する可能性が、図書館から生まれるかも知れません。

          いかがでしょう?

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          2015.09.25 Friday

          本屋

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            営業の帰りに名古屋栄の大型書店「ジュンク堂」に立ち寄りました。
            名古屋の栄や名古屋駅周辺には、ほかにも大型書店がありますが、
            私は「ジュンク堂」が好きです。

            正確には、「ジュンク堂」は「丸善」に吸収されているので
            「丸善ジュンク堂書店」と言うらしいです。

            吸収されたことは残念に思うけど、残っただけよかったと言うしかないなぁ。
            棚の構成は「ジュンク堂」らしさが残っていますから。

            ひさびさに新刊に囲まれるとうれしいさがこみ上げて来ます。
            図書館とは、違う匂いがありますね。新刊の匂いです。

            本屋には、図書館とは違う分類方法がありまして、それによって読みたくなる本が
            ネットワークのように広がっていく仕組みになっています。

            だから、その棚の前に立つと刺激を受けるのです。
            頭が勝手に働いて、点が線に変わっていくのを感じます。

            自分忘れてしまっていた関心事も思い出させてくれて、
            やっぱ素敵な本屋にはときどき行かないといけませんね。

            読まなくとも存在を感じるだけでも、本と本屋の意味はおおいにあります。
            本屋に寄るために、また営業に出ようかな。

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            2015.06.24 Wednesday

            「はじめての構造主義」を読んで

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              自分の中で流行する知識人があって、今は橋爪大三郎さんです。社会学者ですね。少し前は宗教学者の山折哲夫さんや中沢新一さんがブームであったりしましたし、白洲正子さんであったり山尾三省さんであったりしました。一時期集中してその方の著書を読み漁る感じです。コンスタントに読んでいるのは、川口由一さんだけです。

              今回は橋爪大三郎さんの「はじめての構造主義」の読後感想です。

              2000年前後に20歳後半を向かえていた私は『ポスト構造主義』もしくは『ポストモダン』の洗礼をもろに受けていました。「構造主義」を知ったのはそのときです。当時は現代美術の作家活動をしていたので、コンテンポラリーな思想潮流に敏感でした。

              またドイツ人アーティスト「ヨゼフ・ボイス」に心酔していましたので、ボイスがあらゆるジャンルに精通しているのを真似て、ハードルの高いジャンルにも挑戦して難しい本に手を出していました。その中の一つが思想哲学での『ポスト構造主義・ポストモダン』でした。

              しかし、まったく解らなかったですね。『ポストモダン』が建築用語から来ていたくらいの知識で、『ポスト構造主義』の『ポスト(それ以後)構造主義』(構造主義を超えて)の元である『構造主義』も当然解らずじまいでした。

              (それでもレヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」の書名に影響を受けたパフォーマンス作品「悲しき僕の真空パック」を作り成城大学で公演したりしました。ほかには当時影響を受けたいたルドルフ・シュタイナーの著書名から「血液はまったく特性なジュースだ」を作ったりしましたし、京大の西部講堂では、産業革命の元になった蒸気運動をモチーフに「龍の補助輪を外した日」を公演したり、若い日に吸収した知識を作品に換えるエネルギーがありました)

              50歳代で手に取ったこの本「はじめての構造主義」は、その敵討ちみたいなものです。読後それで解ったかどうかを最初に記してみると、「ちょこっとね」くらいでどうにも頼りないですが、それでも理解の進歩があったことは、正直嬉しいことです。歳を取っても知識欲を失いたくないですから。

              さて、橋爪さんは、構造主義の生みの親として「レヴィ=ストロース」にしぼり解説を試みています。

              その中で私が「構造主義」について理解したのは、「主体を超えたところで、その「構造」を解すれば新たな境地が見えてくる」ということにつきるかな。(あまりにも獏とした”まとめ”ですみません・・・)

              「主体に振り回されることなく、全体の構造を見渡して『変換』しながら再構築して、本質に迫ろうとしてる」と考えられるのではないか、とも。

              その「変換」なる概念の元ネタが「数学」にあるということ。これは20代の頃にも何となく知っていました。ただ中学時代から「数学恐怖症」があり、その時点ではお手上げ状態に。それが50代でやっと解説つきで知ることができたのは、温めてきた甲斐があったということです。

              本によると、ユークリッド幾何学の5大公理は証明を超えたものとして「公理=真理」と呼ばれて不可侵だったのが、空間もゆがむとの「非ユークリッド幾何学」によって打ち砕かれてしまったのが近代。

              そして「射影幾何学」の登場によって、見る位置によって見える形が変わると知った人々が、その「性質=構造」を研究した。そのアイデアが「構造主義」の考えの元になっている、と橋爪さんが数学の話を通して解説されていたと思います。(これであってるかな?若干心配・・・)

              私が解説するより、この本を読んで下されればもっといいに違いないので「構造主義」について解ったふりをするのは、ここまでとします。

              本当の読後の感想は、こうなります。

              「研究したり発見したり思想を持ったりするのはいいけれど、それで得た答えを自分自身が実現できるように生きないと、意味ないなぁ」

              「つまり発表したり出版したりして世に問うことは意味があるけれど、最終的には自分がその「答え自身」を人生の中で表現したり、近づこうとしないと中途半端じゃないか」

              「構造主義」が導きだした思想とは接点が薄いですが、現代の思想潮流の到達点がこれだと私は考えています。
              だから「構造主義」も「ポスト構造主義」も私にとって重要なのです。


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              2015.06.04 Thursday

              「妻たちの逆襲、に気をつけて!」

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                上の見出しを掲げた7日発売の女性誌「VERY」(光文社)の新聞全面広告の見出しはすごいですね。
                20周年アニバーサリーの広告で読者の旦那さんに訴えかけているから。

                普通は読者にアピールするところを
                旦那さんへ奥様の気持ちを代弁するかたちを持って、読者に共感してもらう作戦か。

                そのコピーは、

                家族の中心で、いつも笑顔でいようとしている奥さんに
                「ありがとう」という前に、
                ストックの切れそうな
                トイレットペーパーを買ってこよう。
                言葉より、そろそろ態度で示そうよ。

                出版不況の中、20周年を迎えることができる編集部の
                能力の高さがここに見えますね。

                それでも新聞に全面広告出すほどの出費に見合うかな、と私はちょっと心配になってしまいましたが・・・




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                2015.05.15 Friday

                長田 弘氏を悼む

                0
                   日本の有名な詩人と言えば、谷川俊太郎氏ですが、
                  亡くなった長田弘さんも結構知られた存在だったと思います。

                  雑誌「住む」の巻頭の詩をずっと書いておられました。
                  その雑誌の方向というか風向きというか、それを現す巻頭の1篇の詩を担当。
                  長田さんをチョイスした編集長に「ありがとう」と思っていました。

                  実力がありましたよね。また解りやすかった。

                  難しい詩がいけないと私はぜんぜん思いませんが、
                  解りやすく深みのある詩は
                  多くの人の脳裏に突き刺さって行きますから
                  必要なのです。

                  その代表者でした。

                  詩人が尊敬されない国は、2流です。
                  どの国にもすぐれた詩人がいて、尊敬されています。
                  かつて日本の俳人たちは、町民にも武士にも愛されたでしょ。
                  今はどうなんですか。

                  『経済』ばかり見ていると政治も2流以下になってしまうでしょうし、
                  美しい詩をも持てない国になってしまいます。

                  長田さん、亡くなるのが早すぎますよ。
                  もっとたくさん詩を生んで欲しかった。

                  合掌。

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                  2015.03.31 Tuesday

                  『工作舎物語』を読んで

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                    『工作舎物語』を読んで

                    「工作舎」と聞いてピンと来る人は少ないかも知れないですね。
                    「松岡正剛」がいた出版社と言った方が解りやすいでしょう。

                    ブックデザインが他社を寄せ付けなかったのは「杉浦康平」がいたからで、その杉浦氏と松岡氏が存分に腕を振るった雑誌が「遊」です。

                    この「工作舎物語」は、その時代を振り返った本でして、副題が「眠りたくなかった時代」とついています。
                    副題通りに「眠り」についての証言が多く書かれていますが、「トイレで眠る」とか「机の下で寝た」とか、なんだか「なんとかサティアン内の信者」みたいな生活のようだったようです。

                    実際、宗教団体のような雰囲気もあったみたいで、多数の人間がカリスマと共にある目的に向かって行動する様は外から見ると異様なところもあったのかも知れません。

                    しかし、松岡正剛氏の引力はすごいものだったと想像できます。雑誌「遊」は他の雑誌と明らかに違っていました。そのデザイン性と融通無碍な編集方針が時代の先端を行っていました。感度の高い若者はそれに驚き、反応して、その現場に引き付けられたが解ります。

                    当時は、現在と違って「雑誌」は百花繚乱で特徴ある雑誌(編集者)がたくさんありましたから、その中でも光るとは どれだけ異彩を放っていたか解っていただけますか?(「銀花」「みずえ」「太陽」「IS」など質が高い雑誌がありました)

                    私は「工作舎」の本が大のお気に入りで、当時池袋の西武百貨店にあった「リブロ」の本のジャングルを探検し刺激を受けた一人です。その後、名古屋に戻り本屋で働くことになったときも「工作舎」を薦めようと本の表紙を見えるように配置したり、平積みして少しでもお客さんに手にしてもらおうと努力していました。

                    ビジュアルが優れているから表紙を見せたいのです。(背表紙も意匠が施されていたが)もちろん内容も刺激的でニューサイエンスからジェンダー・ネイチャーものなど時代の先端ものを扱っていました。

                    「ガイヤの時代」ラブロック、「ターニングポイント」フリッチョ・カプラ、「生命潮流」ライアル・ワトソン、「蟻の生活」メーテルリンク(私はこのタイトルでパフォーマンス作品を作ったことがあった)「平行植物」レオ・レオニ、日本の著者なら荒俣宏、稲垣足穂、星川淳、田中泯など独特の書き手がいました。

                    『工作舎物語」は杉浦氏と松岡氏にピントを合わせているので彼の元に集まったクリエーターや編集者・デザイナーのインタビューが多く寄せられている内容になっており、工作舎の一般出版物について言及していません。

                    雑誌『遊』出版の裏話から杉浦氏の人間模様をあぶりだしている感じになっています。私はあまりグラフィックデザイナーの名を知らないものですから、この本に出てくる彼らの仕事を連想できません。それでも彼らがここから得たものがものすごく大きくて、その後の人生に多大な影響を与えられたことは伝わって来ました。

                    若い人がカリスマと共に寝起きするコミューンみたいなところは今はないからなぁ。

                    松岡氏は現在も活発に活動されていますね。「松丸本舗」や「千夜千冊」などは超人的な「編集」作業で歴史に刻まれる仕事をしています。彼が作った「工作舎」とともに記録されるべきでしょう。

                    関連ブログ・http://9notes2.jugem.jp/?eid=103
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                    2015.02.07 Saturday

                    みすず書房

                    0

                      新聞・テレビ欄ページに「みすず書房」の広告が搭載されていました。
                      これって前代未聞じゃない?

                      その本とは トマス・ピケティ著 「21世紀の資本」
                      売れているんだね。話題沸騰の人だから。

                      「格差社会」に警笛を鳴らしています。(らしい)
                      私は読んでいないのだけど、「みすず書房」が出版しているだけで信用できます。

                      フランクル著「夜と霧」を出版している(アウシュビッツから生還したユダヤ人心理学者の手記です)
                      人文書の老舗です。

                      出版不況だから他の出版社は羨ましいだろうなぁ。

                      いい本を出し続けたらきっといいことがありますよ。
                      編集者はいい作者を探す嗅覚を忘れないようにしてください!



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